第25章 アレグロに青空を駆け抜ける【呪術甲子園】
――【二回 表】
「歌ちゃん。これって、活躍したらなんかご褒美くれんの?」
――四番《サード》垂水 清貴
「歌ちゃんって呼ぶの止めろ! こっちは教師なんだよ! とっとと打って点稼げ!」
「え〜……ダル……テンション上がんないなぁ」
そう言いつつもバットを構え、ピッチャーの真希が放ったボールを垂水が二塁の方へ打ち上げた。
緩くカーブを描くボールを、詞織が受け止める。
――七番《セカンド》神ノ原 詞織
「詞織ちゃーん! ボクの愛、受け止めてくれた?」
チュッと投げキッスまでされ、詞織は思わず顔を引き攣らせる。
「【玉犬】、喰っていいぞ」
伏黒の許可に、バウッと返事をし、【玉犬 渾】が垂水に襲いかかった。
「おぉ〜っと! 釘崎に続いて、伏黒も乱闘か⁉︎」
やはり、五条はノリノリだ。
「伏黒ー! ストップ ストップ!」
「神ノ原さん! 伏黒くんを止めて!」
「垂水ー! オマエ、わざと手ェ抜いただろ⁉︎」
キャッチャーの虎杖、ベンチの順平の制止の声に、歌姫の怒声が被さる。
乱闘騒ぎが落ち着き、あの男がバッターボックスにやって来た。
「フッ……キャッチャーか。補球、送球、リード、フィールディングetc……虎杖(ブラザー)に相応しいポジションと言えよう。だが、俺が望むのは、ピッチャー・虎杖との一騎討ちだ!」
――五番《キャッチャー》東堂 葵
「東堂、オマエがピッチャーやればいいじゃん」
「ダメよ。メカ丸が今 ピッチャーしかできないんだから」
虎杖の提案を、歌姫がバッサリ切り捨てる。