第25章 アレグロに青空を駆け抜ける【呪術甲子園】
憲紀には才能がある。たくさんの人を助けられる。
助けた数だけ人に認められる。そうしたら、今度は色んな人が助けてくれる。
独りなのは今だけ。
――『いつか立派な呪術師になって、母さんを迎えに来てね』
「そうか……」
微笑を浮かべ、加茂はバットを構えた。
「それは」
――バスンッ!
「良い」
――バスンッ!!
「理由だ」
――バスンッ!!!
「ストライッ! バッターアウッ! チェンジッ!」
「…………」
「加茂ォ! 振んなきゃ当たんねぇぞ‼︎」
五条の判定に、加茂は気まずい沈黙を返した。
――【一回 裏】
「東北のマー君とはあたしのことよ」
一番《サード》釘崎がバッターボックスに入り、バットを構えた。
「東北のマー君はマー君だろ」
「おっかか」
「マー君、投手だぞ」
「野薔薇、そんなにすごいの?」
「マー君レベルは、野球一本で打ち込まないと難しいと思うよ」
ベンチから、伏黒、狗巻、虎杖、詞織、順平のツッコミが入る。
ちなみに、順平は五条の計らいにより、ベンチメンバーとして入れてもらった。しかし、交流会は見学のため、出場する予定はなく、近くで応援するための建前である。
「…………」
釘崎が無言でベンチを睨みつける中で、ギギ…と機械音とともにピッチャーがマウンドに立つ。
――七番《ピッチャー》究極 メカ丸
「ちょっっっと待て! どう見てもピッチングマシーンだろーが!」
「釘崎がキレた! 乱闘だぁ!」
まるで実況するように楽しそうな五条だが、止める様子はない。
ツカツカとピッチャーのメカ丸(ピッチングマシーン)に向かっていく釘崎に、虎杖と狗巻が止めに入った。