第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
「クソッ!」
もう少しなのに。
どうしたら。
どうしたら。
どうしたら……っ!
「虎杖(マイフレンド)!」
唐突に、パァンッと東堂が虎杖に加減もなく平手を食らわせる。
すぅ…っと頭の中を渦巻いていた様々な感情が引いていった。
「“怒り”は術師にとって重要な起爆剤(トリガー)だ。相手を怒らせてしまったばかりに格下に後れを取ることもある」
逆もまた然り。“怒り”で呪力を乱し、実力を発揮できず負けることも。
「友である伏黒たちを傷つけられ、そして何より、親友である俺との蜜月に水を差され、オマエが怒髪衝天に陥ってしまうのはよぉーく理解できる。だがその怒り、オマエには余る。今は収めろ」
反対の頬に、再び平手が見舞われる。
仲間割れかと呆然とする花御の視線を感じるも、気にならない。
頭が澄み渡る。
「消えたか? 雑念は」
「あぁ、雲一つねぇ」
――Thank you so much 東堂(ベストフレンド)‼
虎杖は大きく息を吸い込み、花御を見据えた。
――【黒閃】。
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。
威力は平均で通常の2.5乗。【黒閃】を狙って出せる術師は存在しない。
だがしかし、【黒閃】を経験した者とそうでない者とでは、呪力の核心との距離に天と地ほどの差がある。
微動だにせず、瞬き一つ、口元から涎が流れるのも気づかないほどの凄まじい集中力。
――打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る。
――バチィィッ‼︎
虎杖の放った打撃によって生まれた衝撃波が、黒く光った。