第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
「俺は手を出さんぞ。オマエが【黒閃】をキメるまでな。【黒閃】をキメられずオマエがどんな目に遭おうと、俺はオマエを見殺しにする」
「押忍‼」
それほど場数を踏んだわけではないが、目の前の呪霊が特級であること、それもかなり強いだろうことも分かる。
『《さて、どうくる?》』
頭に直接 響く声。目の前の呪霊のもののようだ。
「オマエ、話せるのか」
特に返事はなかったが、肯定や否定の言葉が聞きたかったわけではない。
「だったら、一つ聞きたいことがある。オマエの仲間に、ツギハギ面の人型呪霊はいるか?」
真人という名の、顔に縫合線を持ち、襤褸のような服を纏う青年の姿の呪霊。
魂がどうのこうのと話しながら、人間をおもちゃのように扱い、順平を殺そうとしたヤツだ。
『《……いる、と言ったら?》』
それを聞いた瞬間――身体が勝手に動いた。
それでも、いきなり相手の懐へ突っ込まなかったのは褒めてもらいたい。
虎杖は手近にあった岩を掴み、花御へ向けて投げつけた。
花御ご樹木の毬が飛んでくるも、虎杖はそれごと連続で顔面へ蹴りを入れる。
「《速い……先ほどの少女以上の瞬発力。だが、威力はお粗末だ》」
胴体がガラ空き。手加減をした打撃で、相手もこちらを侮っている。
今ならキマる――【黒閃】!
脳裏に過ぎるのは、異形にされ、自分が殺してしまった人間。
――「また死んだらゆるさない!」
――「そのときは俺がオマエを殺す!」
傷ついた伏黒と詞織、倒れた真希の姿を思い出し、怒りで脳が沸騰する。
身体の中心から熱が全身に広がっていく。
樹木の毬が飛んでくる。さらに伸びてきた樹木の枝に、距離を詰められなくなってしまった。