第22章 未定
「気安く詞織に触るのやめてもらえませんか?」
「男の嫉妬は見苦しいよ、伏黒クン」
「二年後の結婚式には招待するんで、それまですっこんでて下さい」
「へぇ……人妻になった詞織ちゃんと陰で盛り上がるのも悪くないかも?」
「アンタ、詞織のタイプじゃないんだから、いい加減に諦めろよ」
やいやいと言い合いを始めた二人を、どこか他人事のように眺めていると、タバコに火をつけた家入がクスクスと小さく笑った。
「愛されているな」
「うん」
照れもせずに頷いた詞織に目を丸くする家入に、首を傾げる。
何か変なことを言っただろうか。
「随分とはっきり頷くな。あの堅物な伏黒も、不安を感じさせないくらいの愛情表現をしているのか?」
「そう。不安を感じたとしても、すぐに吹き飛ばしてくれる」
だから、今では自信を持って言えるのだ。
「メグはわたしのことが好きだ」と。
フッと吐息のような笑い声を漏らし、家入は詞織の頭を撫でる。
「今度、じっくり話を聞かせろ」
「なんの?」
撫でられて乱れた髪を整えながら首を傾げると、家入は「おい」と垂水に声をかけた。
「垂水。お前、釘崎や真依と出動するように言われていただろ」
「げっ」
あからさまに顔をしかめる垂水に、家入は「さっさと行け」と急かす。