第22章 未定
「はいはい。ノロケなら酒の肴に今度聞いてやるよ」
「酒の肴にするなら話しません」
キッパリと断る伏黒に苦笑しつつ、家入が頬に触れてきた。
ひんやりとした細い指先に身体を震わせるのと同時に、タバコの匂いが肺へ侵入する。
「自分で反転術式をかけたって? 狗巻や加茂のもだろ?」
「まだ上手く使えない」
「確かに、反転術式って言えるレベルじゃないけど、筋は悪くない。なんなら、今度みっちり教えようか? 仕事が減るのは大歓迎だ。その分、解剖の方に時間を割けるし」
「お願い」
反転術式が使えれば、万が一 伏黒たちが危機に陥ったときに助けることができる。虎杖が無茶をしてもフォローできる。
仲間は死なせない。もう二度と。
「気負いすぎだ、バカ」
ポンッと軽く頭を叩かれると同時に、ガラッと慌てた様子で開けられた。
「詞織ちゃん、大丈夫⁉︎」
伏黒を無視して、垂水 清貴が真っ直ぐにこちらへ来て、頭やら身体やらを触ってくる。
「ごめんね、ボクがいれば特級呪霊なんてシャチに食わせてやったのに!」
シャチ……たしか、サメも逃げ出す海洋界のギャングだったか。
先ほどは戦闘中で、彼の式神をマジマジと見るどころではなかったが、ぜひじっくり見てみたい。
そんなことを思っていると、伏黒が垂水から庇うように割って入ってきた。