第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「ん……」
目を覚ました詞織は、ぼんやりとした頭で直前までの記憶を辿り、ハッと周囲を確認した。
「呪霊がいない……」
狗巻と加茂が倒れている。それ以外は戦闘の痕跡が残るだけで、他には何もなかった。
二人に駆け寄って生存を確認する。呼吸は浅いが、傷の手当てさえすれば問題はなさそうだ。
そこへ、少し離れた森の中で、轟音と共に戦闘音が聞こえた。
「メグ……!」
自分の傷はほぼ治っている。喉も。
おそらく、縛りを破ってまで、詩音が出てきてくれたのだろう。今頃、反動で酷く苦しい思いをしているはずだ。
胸に手を当てる。深い愛情を感じて、胸が温かくなった。
しかし、すぐに気持ちを引き締める。
伏黒のところへ加勢に行きたいが、狗巻と加茂を、放って行くことはできない。
「あなた、東京校の神ノ原さんよね?」
頭上からの声に見上げると、そこには箒に乗った少女がいた。
確か、京都校三年の西宮 桃だったはず。
「加茂くんと狗巻くんは無事なの?」
「無事……だけど、早くショーコさんのところに連れて行かないと……」
箒から降りた桃が、狗巻と加茂の容態を確認する。
「頭に傷……加茂くんは脳震盪を起こしてる可能性が高い。下手に動かすと危ないかも」
「それなら……」
軽く息を吸い込み、厳かに唱えるようにして歌った。
「【君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな】」
フワッと柔らかな光が二人をそれぞれ包み込んだ。すぐに状態を確認した桃が、大きな目を丸くする。
「まさか、反転術式⁉︎」
「そんなに上等なものじゃない。まだちゃんと使えないし……傷を塞ぐくらいしかできないから」
狗巻との特訓で身につけたが、きちんと使いこなせていない。それでも、習得できれば今後 必ず役に立つはずである。