第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
絶句する桃を促し、詞織も狗巻と加茂を彼女の箒に乗せる。
歯を食いしばる桃の箒は、ふらふらとおぼつかない。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけないでしょ。定員オーバーよ」
確かに。むしろ、箒が三人分の体重に耐えているのは、桃の呪力によるものだろう。
「あなたはどうするの?」
「メグのところに行く。さっきの呪霊とまだ戦っているみたいだし、加勢に行かないと」
きっぱりと即答する詞織に、桃は「は?」と怪訝な表情をした。
「それなら東堂くんが向かっているはずよ」
「東堂?」
京都校のメンバーを思い出す。およそ高校生とは思えない体格の大男だ。
真希も「バケモノ」と評価していたし、伏黒がボコボコにされていたはずである。
「彼は強いのが取り柄だもの。きっとどうにかしてくれるわ」
「ユージもいるかも……」
東堂がいるならば、足止めをしていた虎杖も一緒だろう。
胸に過ったのは、虎杖が死んだとされたときの喪失感。
彼は必ず無茶をする。他人のために、いくらでも身体を張ってしまう。
ならば。
「……ユージ……」
心は決まった。
未だ戦闘音が止まない森の方を見据える詞織に、桃が「ちょっと!」と声を上げた。
「まさか、あなたも行くつもり?」
「仲間が戦っているの。安全なところになんていられない」
桃の後ろでぐったりしている狗巻の頬に触れる。ピクリと動いた瞼が薄く開かれた。
「ツ、ナ……?」
「ありがとう、棘くん。棘くんの特訓のおかげで、わたしでも戦えるよ」
感謝の気持ちを素直に伝えると、狗巻がふにゃっと笑みを浮かべ、再び瞼を閉じる。
「お願い」
短く頼むと、桃の箒が三人を乗せ、よろめきつつもゆっくりと空へ浮いた。
「ほどほどにしなさいよ。死んじゃったら元も子もないから」
ピシッと指を突きつけ、「分かった⁉︎」と言い置いて、桃がふらふらと空を飛んでいく。
それを見送り、詞織は深く息を吸い込んで覚悟を決めた。
* * *