第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「急げ。どうせすぐ治して来る」
加茂に促され、伏黒も先を急ぐ。
喉への負担を強いられる狗巻が遅れないように気を配りながら、伏黒は頭を働かせた。
狗巻で足止めし、自分や加茂で攻撃して距離を取る。
これを繰り返して帳の外を目指し、五条たちと合流する。それが一番の最善策だ。
しかし、その均衡がいつ崩れるか分からない。呪言の効果は強力だが、耳から脳にかけてを呪力で守れば克服できる。
五条たちとの連絡手段がない今、呪霊が呪言の対処法に気づいたら終わりだ。
早めに二年、もしくは狗巻をフォローできる詞織かパワーとスピードを兼ね備えた虎杖と合流したい。
屋根へ逃れると同時に、樹木で壁を突き破って呪霊が追いかけてきた。
「狗巻先輩が止めてくれる。ビビらず行け」
伏黒は呪霊の強さに怯む鵺の頭を撫で、背中を押す。大きな翼を広げて鵺が呪霊に迫った。
狗巻が呪言を発するべく口を開く。
――プシッ!
鵺の身体に呪霊の腕が突き刺さった。
同時に、狗巻が血を吐いて蹲る。
呪言を酷使し過ぎて喉が潰れたのだ。
それほど強い呪言は使っていないはずだが……それだけ、目の前の呪霊が格上だということ。
倒れた狗巻を庇おうとした加茂に呪霊が迫る。呪霊はそのまま加茂の頭を掴み、屋根瓦に叩きつけた。
「加茂さん‼︎」
畳み掛けるようにして、樹木の毱が加茂に向けて放たれる。加茂を庇うべく駆け出すが間に合わない。
「【かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを】」
ゴウッと轟音を立てて樹木の毱が燃え尽きる。
耳に心地よい歌に心が揺れるも、伏黒は加茂の身体を引き寄せて呪霊から距離を取った。