第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「大丈夫大丈夫! 足手まといなんて気にしなくていいの! だいたい、二人も三人も変わんないから!」
え……それって、楽巌寺と歌姫も足手まといだと?
学長や教師やってるくらいだから、この二人もかなり強いのでは?
それを足手まといと表現するとは……呪術界最強の男――恐るべし。
五条の台詞に歌姫が青筋を立てるが、状況が状況だけに、怒鳴るのは控えたようだ。
それに調子づいた五条がパンパンッと手を叩く。
「ほら、お爺ちゃん、散歩の時間ですよ! 昼ご飯はさっき食べたでしょ!」
怖い怖い! まがりなりにも学長相手にボケ老人扱い!
反応するのも馬鹿らしいと思ったのか、無言を貫く楽巌寺に、歌姫が「急ぎましょう」と先を促す。
「吉野君。ソレといると馬鹿が移るわよ」
「は、はい!」
あ、返事しちゃった。
しかし、後で引っ込めるなんてことができるわけもなく。
歌姫に続いて一歩を踏み出すと、五条が肩を掴んで引き止めてくる。
「順平は僕の後ろをついて来て。一番安全だから」
人差し指を立て、幼い子どもにこっそりと言い聞かせるようにして告げる五条に、順平はキョトンとしつつも、頷くしかない。
歌姫たちに追いつき、順平は五条たち三人と建物の外へと出た。
試合が行われている森を目指してひたすら走る。
不意に、ドロリと大量の墨汁を流したようにして、空の一部が黒く変色した。それはどんどん広がり、地面へと黒い幕を下ろしていく。