第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
食らった攻撃から体勢を整えた伏黒は、畳み掛けるようにして放たれた加茂の拳を、折れていない方のトンファーで受け止めた。
さらに手の中でトンファーの向きを変え、加茂の頭を狙う。しかし、その攻撃はしゃがんで躱され、続け様に加茂は掌底を放ってきた。
どうにかトンファーで防ぐも、威力に耐えられずにもう片方のトンファーも折れてしまった。
「近接戦でここまで立ち回れる式神使いは貴重だよ。成長したね。嬉しいよ」
「ちょいちょい出してくる仲間意識は何なんですか?」
加茂の言葉に眉を寄せつつ、伏黒は折れたトンファーを投げ捨てる。
「共感(シンパシー)さ。君はゆくゆく、御三家を支える人間になる」
加茂家は正室に術式を継いだ男児が産まれず、側室の子である加茂 憲紀を嫡男として迎えたと聞いたことがある。
伏黒も、父親が禪院の分家出身で、禪院家相伝術式 十種影法術を継いでいる。
生い立ちは知らないが、立場は似ていると言えなくない。
だが、伏黒は自分を禪院の人間だと思ったことはないし、今後も関わるつもりはない。
言葉を区切り、戦闘体勢を一度解くと、加茂は静かな声音で言葉を紡いだ。
「私は、虎杖 悠仁を殺すつもりでいる」
信じられない、とは思わなかった。ある程度 予想していたこと。しかし、腹の奥底からは怒りととれる感情が湧いてくる。
「……楽巌寺学長の指示ですか?」
思った以上に低い声が喉から出た。
「いや。"私個人"の判断だ。呪いの王 両面宿儺の器の存在は看過できない。そのついでに、一族一つを呪い殺した呪霊を宿す神ノ原 詞織を殺すことができれば上々」
「は……?」
虎杖だけではなく、詞織まで殺す?
怒りで焼き切れそうになる理性をギリギリで保つ伏黒に構わず、加茂は続ける。