第20章 それは笑えないスケルツォ【京都姉妹校交流会―団体戦―】
「…俺のホホジロザメが、一瞬で……? 嘘だろ……一級呪霊を一瞬で喰らったヤツらだぞ……」
『一級と一緒にしないでくれる? 枷を解き放った今、あたしはそこらの特級よりも上。言ったでしょ。あなた程度には祓えないって』
ぎりッと奥歯を噛み締めた垂水は、冷や汗を流しながら口角を上げる。
「そうかよ。だったら……とっておきを見せてやる!」
そう言った彼は、大きく手を広げた。すると、巨大な水の輪がいくつも現れる。
ぞわりと嫌な予感が背筋を駆け上がる。
「【心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花】」
水の輪が一度にピシッと凍りついた。
そして、畳み掛けるようにして、詩音が余裕の笑みを浮かべて不動明王印を結ぶ。
『【ノウマクサラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタ・タラタ・センダ・マカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビキナン・ウンタラタ・カンマン】!』
パンッと氷が弾け飛んだ。
その光景に、垂水は愕然と目を見開く。
『足りないわ。全然足りない。力も、詞織への愛もね』
ゆっくりと詩音は詞織の身体を動かし、垂水へと歩み寄った。彼は微かに怯えた表情で後退さり、背後の木に背をつけた。