第19章 それぞれの想いが奏でるカノン【京都姉妹校交流会―団体戦―】
開始宣言を受け、詞織たちは森の中へ踏み出した。
詞織の隣では、森に入ると同時に伏黒が影から玉犬を呼び出す。黒い体毛を持つ玉犬は、破壊された白い玉犬の能力を引き継ぎ、容姿も若干変化していた。
詞織は、渾(こん)と名づけられた玉犬の頭を撫でる。
「お願いね、コンちゃん」
クゥンと鼻を鳴らす玉犬が手にすり寄ってくるが、仕事の邪魔をしてはいけない。
「ボス呪霊、どの辺にいるかな?」
「放たれたのは両校の中間地点だろうけど」
虎杖の問いにパンダが答える。両校は森の両端からスタートするため、その中間に放たれただろうという推測だ。
しかし、じっとはしているわけはないだろう。
「例のタイミングで、索敵に長けたパンダ班と恵班に分かれる。後は頼んだぞ、悠仁」
真希の指示に全員が頷いた。
不意に、伏黒の玉犬が「バウッ」と声を上げて注意を促す。
視線を追うと、蜘蛛のような呪霊が道を塞いだ。無数の目を持つ蜘蛛のような呪霊は、木に糸を巻きつけてぶら下がっている。
『どごいグのぉ~?』
三級程度のザコ。
詞織たちが構えるより先に、真希とパンダが構える――と、玉犬が反応を示したのにいち早く気づき、伏黒が叫んだ。
「先輩、ストップ!」
そう叫ぶのと同時に、伏黒が詞織を背後へ押しやる。
――ガバァッ!
呪霊ごと木々をなぎ倒して現れたのは、東堂だ。動きやすさを重視したのかどうか分からないが、すでに上着は脱ぎ捨てている。