第18章 吉野 順平のソロ【番外編】
「……僕は、臆病な人間だ……弱くて、卑怯な人間だ……」
澱月の滑らかな身体を支えに、順平はふらりと立ち上がった。
「正しいことに自信を持てないし、間違っていることを認めることもできない」
そんな自分が、今まで一番嫌いだった。
「だから、正しいことを正しいって、背中を押してくれる仲間が欲しい! 間違っていることを止めてくれる仲間が欲しい! 逃げ出そうとする僕を、殴ってでも引き止めてくれる仲間が欲しい! 僕が……!」
グッと言葉が詰まった。それでも、自分の弱さを吐き出す必要がある。
そう思って、順平はゴクリと唾を呑み込んで続けた。
「僕が……僕のままでいられるような、居場所が、欲しい……!」
ずっと独りだった。
世界にいたのは、母と自分だけ。
壁を作って、隔絶された世界の中にいれば、それでよかった。
その壁を、虎杖が粉々に打ち砕いてやって来たのだ。
頼りになる仲間がいると、手を伸ばしてくれた。
「いつか、母さんを殺した呪詛師を見つける。見つけてどうするか……今は分からない。それでも、仲間と一緒に過ごしながら考えたい。たとえ見つけた答えが正しくても、間違っていても……"僕が僕のままでいられる"答えを探す!」
カッパが飛びかかってくる。それを、澱月に命じて受け止めた。
そして、鋭い触手をいくつも床に突き刺し、檻のようにして捕らえる。
「僕はもう逃げない! 逃げたくない! どんなに苦しくても、どんなに辛くても……それだけの力をここで手に入れる! 虎杖君が僕を救ってくれたみたいに、僕も誰かを助けることができるって、僕自身に証明するんだ‼︎」
暴れるカッパの人形を、澱月が押さえつけた。そこから注意を逸らすことなく、順平は睨みつけるようにして夜蛾を見据える。
すると、不意に彼は肩の力を抜き、五条の方へ視線を向けた。