第18章 吉野 順平のソロ【番外編】
「悟、寮を案内してやれ。それから、もろもろの警備(セキュリティ)の説明もな」
唐突な話の展開についていけないでいると、夜蛾はゆったりとした歩調で近づき、手を差し出す。
「合格だ。ようこそ、呪術高専へ」
グッと込み上げてくる感情は、きっと『喜び』だ。
呪術高専のメンバーは、まだ虎杖と五条のことしか知らない。
未知のことに対する不安はあるが、それでも、自分が頼れるのはここしかなくて、ここ以外に頼るつもりはない。
一瞬だけ、真人の姿が脳裏を過った。
優しいふりをして、自分を殺そうとした呪霊。
きっと、彼に教わったことも間違ってはないのだろう。
否、『間違っていないのだろう』と思う自分がまだいるのだ。
大丈夫。
そう、自分に言い聞かせる。
ここで、本当の自分を見つけ出すのだ。
先ほど夜蛾に宣言したことを全部 成し遂げてみせる。
きっと、変われるはずだ。
いつか、自分を誇れるように。
自分のことを『嫌いじゃない』と言えるように。
「……あの……! よろしく、お願いしま……グハァッ⁉︎」
術式を解除して澱月を戻し、伸ばされた手を握ろうとして、順平は誰かに横っ面を殴り飛ばされた。
誰だ、と思えばカッパの人形だ。
「あ、スマン。術式を解くの忘れてた」
そんなお茶目はいらない。
タコ殴りにされている自分の生徒を、腹を抱えて笑う五条。
きっと、うまくやっていける……はず……。
少しだけ失いかけた自信の中で、順平はそう願った。
【番外編 了】