第18章 吉野 順平のソロ【番外編】
「不合格だ」
夜蛾が手を広げた先で、カッパの人形が意思を持ったように起き上がった。
「な、なんで……⁉︎」
「【呪骸(じゅがい)】――私の呪いが篭った人形だ」
カッパの人形が大きく飛び、拳を打ち据えてくる。
「【澱月(おりづき)】!」
慌てて澱月を呼び出して盾とするが、柔らかな身体では衝撃を受け止めきれず、一緒に弾き飛ばされてしまった。
「うわぁ⁉︎」
ガンッと強かに壁へ身体を打ちつけてしまう。ジンジンと痛む身体を無理やり起こす。
ちらりと五条へ視線を向けたが、愉しそうに唇が弧を描いているだけで、当然のことながら助けてくれる気配はない。
「窮地にこそ人間の本音は出るものだ。納得のいく答えが聞けるまで攻撃は続くぞ」
「ぼ、僕は……」
何か言わなければと口を開くものの、その先を続けることはできなかった。
さらに追い打ちをかけるようにして、カッパが攻撃をしかけてくる。
「呪術師は常に死と隣り合わせ。目的のない復讐に囚われては早死にするだけだ」
「それでも! それでも僕は、母さんを殺した呪詛師が許せない! 僕は母さんのために……!」
澱月の鋭い触手がしなり、カッパを弾き飛ばした。
柔らかい身体が床に叩きつけられたが、まるでピンポン玉のように床から壁へと弾くと、そのまま順平めがけて頭突きを放つ。
澱月のガードも間に合わず、その勢いのままに順平は吹き飛ばされてしまった。
「ガハッ!」
相手は人形……痛みも感じなければ怯むこともないのだ。