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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第18章 吉野 順平のソロ【番外編】


「遅いぞ、悟。八分の遅刻だ」

 その人物を見た瞬間、順平はギョッと目を剥いた。
 サングラスをかけた髭面のいかつい男が、チクチクと人形を作っているのだ。驚かないはずがない。

 いかついオジさんとカワイイ人形の組み合わせ……なんとシュールな光景なんだ。

「責めるほどでもない遅刻をする癖を治せと言ったはずだぞ」

「責めるほどじゃないなら責めないで下さいよ。どうせ人形作ってんだからいいでしょ、八分くらい」

 え、学長なの? この怖そうな人が?
 怖そうだけどカワイイ人形を大量生産しているオジさんが?


 ――夜蛾 正道 東京都立呪術高等専門学校 学長


 言葉も出ない順平を、サングラスの奥の厳しい瞳が捉える。

「その子が編入生か?」

 ビクッと肩を反応させつつも、順平はバッと頭を下げた。

「は、初めまして! 吉野 順平です‼」

 よろしくお願いします、と気負いつつ挨拶をする順平に、夜蛾は作りかけの人形を脇に置く。

「何しに来た?」

「え……えっと……?」

 何をしに来た? 質問の意図が全く分からない。

「面談……?」

 順平の答えに、夜蛾は「違う」と首を振る。

「呪術高専に、だ」

 え……自分はどんな答えを求められているのか。
 呪術高専には呪術を習いに来たのだが……きっとそういうことではないのだろう。

 助けを求めるように五条を振り返るが、彼は壁に背を預けて見守るつもりのようだ。聞いても何も答えないだろう。

「呪術を学び、呪霊を祓う術(すべ)を身につけ、その先に何を求める?」

 重ねて問う夜蛾に、順平の頭の中はグルグルと取り留めのない思考が巡る。
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