第18章 吉野 順平のソロ【番外編】
――数日前。
順平は呪術高等専門学校に行くべく、東京とは思えないほどの山の中を五条と歩いていた。
五条 悟――虎杖の担任で、呪術界最強の呪術師。
長身と黒のアイマスクがちょっと怖いと思ったが、話してみれば気さく……というか、ちょっとテンションがヤバイなと思ったが、怖いという印象は一瞬で消えた。
「……あの……虎杖君と星也さんは……?」
「二人は治療を受けてるよ。星也の双子の姉さんが反転術式による治療ができるんだ」
「反転術式……」
呪術界に足を踏み入れたばかりの順平には、当然のことだが知識がない。
どうやら、覚えることが多そうだ。
唐突に不安に駆られた順平の頭を、五条がガシガシと撫でる。
「大丈夫、これから一つずつ覚えていこう」
はい、と頷こうとしたが、それより早く五条が言葉を続けた。
「とりあえず、順平はこれから学長と面談ね」
「め、面談⁉」
え、何も聞いてないのだが。心の準備もできていない。
ど、どうしよう……。
ただでさえ不登校で、話し相手はコンビニや映画館の店員、それか母親だったのに。
「ちなみに、下手打つと入学拒否されるから。頑張ってね」
「えぇッ⁉ そんな……ッ! 母さんが死んで、僕に行く当てなんてないんですよ⁉」
入学を断られたら、自分はのたれ死ぬしかないではないか。
「ど、どうしよう……」
こんなことなら、虎杖にどんな質問をされるか聞いておけばよかった。
そんなことを考えている間にも、山の木々を分けて、気がつけば呪術高専の入口まで来ていた。
ギッ…と音を立てて扉が開かれる。