第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「ユージ」
「ん?」
後ろから声をかけられて虎杖が振り返ると、伏黒と詞織がゆっくりとこちらへ歩いてきていた。
つき合い始めたと聞いたときは驚いたが、お似合いだと思える。
なんというか……収まるべきものがピッタリと収まった……そんなイメージだ。
「ほら、メグ。やっぱりそうでしょ?」
虎杖に呼びかけておいて、なぜか詞織は伏黒へ同意を求める。
それに対して伏黒も、「そうだな」と相槌を打った。
一人置いてけぼりを食らう虎杖は、全く話が見えない。
「虎杖、大丈夫か?」
無表情――に見えるが、伏黒の声からは気遣うような響きを感じる。
どうやら、交流会のことを気にしてくれているようだ
「おぅ、なんか大役っぽいけど、なんとかなんべ」
京都校のバケモノじみた強い先輩の足止めを任され、少し気負っているところは確かにあるが、逃げ出すことは絶対にしない。
しっかり足止めもしつつ、勝利をもぎ取るのだ。
「そうじゃない」
淡々とした詞織の声音が否定を紡ぐ。
続いて、伏黒も微かに眉を寄せた。
「何かあったろ?」
二対の探るような視線。
思い出すのは、肉を抉るような感触。
そして、のしかかる人間の命の重さ。人を殺したという事実。
「あ? なんもねぇよっ」
笑顔を作って心を隠すが、二人は黙って虎杖を見つめた。
好奇心で聞いているのではない。
本当に、自分を心配してくれているのだ。
それが分かって、虎杖は笑顔を消し、逃れるように視線を逸らす。