第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「ねぇ、学長。ボクの詞織ちゃんを始末なんていい度胸じゃん。その前にテメェを地獄に叩き込んでやろうか?」
整った顔に凶悪な笑みを張りつける垂水に、三輪は「またか」とげんなりした。
「学長に対して無礼だぞ、垂水」
「加茂っちは引っ込んでな。惚れた女 殺せって言われて黙ってられるほど、"オレ"は寛大じゃねぇ。次の発言次第じゃマジで殺すぞ」
普段のチャラチャラとした雰囲気は成りを潜め、垂水は指先に水の刃を作って楽巌寺に突きつける。
「……ならば、神ノ原の小娘はお主に任せる。好きにしろ。その代わり、虎杖 悠仁の件は協力してもらうぞ」
すると、垂水は一転、目を輝かせた。
「え? マジ? それだけでいいの? 今日 初めて言葉通じた気するわ」
一転、目を丸くしつつも、垂水は声を弾ませる。
本当に失礼な男だな、コイツは。それは思ってても言っちゃダメだろ。
それに、虎杖 悠仁殺害を「それだけ」と表現するのは、人間的に終わっていないか。
「じゃあ詞織ちゃんのこと、家に閉じ込めてベッドに縛りつけて毎朝毎晩抱きしめて頭がグズグズになるくらい愛してもいい? あ、でも呪術で反撃されたら元も子もないな。やっぱ喉は潰しとくか」
何その拷問。頭おかしくなりそう。
軽い感じで「喉潰しとくか」って怖いわ。
前からヤバイ奴だと思ってたけど、本当に超ヤバイな、この男。
こっそり周囲を窺えば、真依と桃も顔を青くしている。おそらく、同じことを思っているのだろう。
やがて、深いため息を吐きながら、楽巌寺は部屋から出て行った。