第17章 開幕のファンファーレ【反省】
――京都校サイド ミーティング
「宿儺の器 虎杖 悠仁は殺せ。アレは人ではない。故に全て不問。事故として処理する。遠慮も躊躇もいらんぞ」
ミーティングが始まるや否や、学長の楽巌寺はストレートに生徒たちへそう命じた。
その命令に、三輪は内心で「イヤだなぁ」と渋面を作る。
「殺すもなにも、彼 死なないからここにいるんですよね?」
「先の虎杖の死は"自死"だと聞いておる」
真依の指摘にも楽巌寺は引き下がることなく続けた。
「敵対術師にトドメを刺すとき 気をつけねばならんことは? 加茂」
「はい。死後 呪いに転ずることを防ぐために呪力で殺します」
淡々と答える加茂に、老人は「そうだ」と大きく頷く。
「他者の呪力でしっかりトドメを刺せば、何の問題もない」
現在 肉体の主導権は虎杖 悠仁にある。
宿儺が出てこなければただの一回生だ。殺すのは簡単だろう。
三輪も人の命を奪ったことはある。
そのときはそうするしかなかったし、それが最善だと思ってやったことで、後悔はしていない。
だが、そのときと、今回の虎杖 悠仁を殺すことは、全く別だ。
宿儺に人格を乗っ取られて手当たり次第に周囲を攻撃しているのならば躊躇いなく首を刎ねるが、そうではないのだ。
せめて、自分がその役に当たらないように誘導しなければ。
――バキィッ
突然の音に振り返ると、東堂が障子を蹴破っていた。吹き飛んだ障子の破片が池に落ちていく。
「下らん。勝手にやってろ」
「戻れ、東堂。学長の話が途中だ」
加茂――呪術界で高い権力を誇る御三家の一角。
加茂はその家の嫡男だ。そんな彼の言葉に従うことなく、東堂は舌打ちする。