第3章 はじまりのプレリュード【両面宿儺】
何か言おうと口を開こうとすると、虎杖が抱える女子生徒の手から何かがこぼれ落ちる。
それに目を止めて、虎杖が女子生徒を抱えたまま拾い上げた。
「これが?」
「あぁ」
虎杖が拾い上げたのは、ミイラ化した人間の指だ。
「特級呪物――【両面宿儺(りょうめんすくな)】の一部」
「りょうめ……?」
呟くように言う詞織に聞き返すも、当然 虎杖が分かるはずもない。
詞織も同じことを思ったようで、「分からないと思うから考えなくてもいい」と解説を拒否する。
「危ねぇからさっさと渡せ」
手を差し出すと、虎杖も「はいはい」と適当に相槌を打ちながら手を差し出す。そんな虎杖の上の天井の変化に、伏黒は眉を寄せた。
一瞬 気のせいかとも思ったが、いや、違う。
明らかに天井が不自然に歪んでいる。
遅れて詞織も気がついたが、すぐに動くことはできないようで、ただ天井を見つめて目を丸くしていた。
伏黒はとっさに「逃げろ」と詞織を突き飛ばし、素早く己の式神に指示を出す。
霞む視界の中で、零れそうなほどに詞織が目を見開いたのが見えた――……。
* * *