第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「そんな便利なモンじゃないさ。実力差でケースバイケースだけどな」
パンダの話だと、強い言葉を使えば大きな反動がくるし、最悪自分に返ってくる。
語彙を絞るのは狗巻自身を守るためでもあるのだそうだ。
何にでもリスクは存在する。
人を呪わば穴二つ。誰かを呪えば呪った分、自分に返ってくるということか。
「他人の術式をペラペラと……」
「いいんだよ、棘のは。そういう次元じゃねぇから」
――東京校二年 禪院 真希 四級呪術師
眉を寄せる釘崎を置いて、真希はツカツカと虎杖の元へ歩き、手を差し出した。
「んなことより、悠仁。屠坐魔(とざま)、返せよ。悟に借りたろ」
何の話だろうか。
首を傾げる順平の前で、虎杖がサッと顔を青くする。
ガバッと順平の肩に腕を回し、「どうしよう!」と小声で話しかけてきた。
「屠坐魔、壊しちゃった!」
「こ……⁉︎ いつ⁉︎」
虎杖に倣い、順平も小声になる。
「俺が死んだ日。呪霊にパッキンて真っ二つにされて……その後は分からん!」
虎杖の話では、もともと五条から渡された呪具のようで、虎杖も五条の持ち物だと思っていたらしい。
しかし実際は、真希が五条に頼まれて貸し、それを五条が虎杖に貸したようだ。
「そ、それは正直に言った方が……」
「そんなこと言ったら……」
虎杖が正直に壊したことを告げれば、真希は特級呪霊も逃げ出すほどの鬼の形相で締め上げ、一ヶ月はパシリとしてこき使うことだろう。
「おい、どうした? 早く出せよ」
真希に急かされ、虎杖と順平は一つ頷く。
「五条先生ガ……持ッテルヨ……」
グッと虎杖が親指を立てて見せると、真希は舌打ちした。
「あのバカ目隠し」
どうやら、危機は乗り越えたようだ。
順平は虎杖と揃って安堵の息を吐いた。
後は五条が何とかしてくれるだろう……多分。