第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「故人の虎杖 悠仁君でぇーっす‼︎」
「はい! おっぱっぴー‼︎」
きっと、この瞬間のことは一生忘れることはないだろう。
異常なテンションで箱から飛び出した虎杖に、伏黒を含めた東京校のメンバー全員の表情が引きつり、同時に凍りつく。
何となく背後を窺うと、京都校のメンバーは五条からのお土産に夢中になっていた。
しげしげと眺めたり、いらなそうに摘まんだり、嬉しそうに見つめたりしている。
「――【宿儺の器】⁉」
しわがれた老人の声に振り返ると、京都校の学長である楽巌寺 嘉伸がいた。
耳や鼻、口にまで沢山のピアスをつけた老人は、杖を持つ手を震わせながら、驚愕の表情をしている。
そんな楽巌寺を見て、五条は手を上げつつ軽い足取りで近づいた。
「楽巌寺学長―! いやぁ、よかったよかった。びっくりして死んじゃったらどうしようかと心配しましたよ」
丁寧な五条の言葉の中には、舐めきった響きがある。腰を負って目線を合わせた五条は、愉快そうに喉の奥を鳴らした。
「糞餓鬼が」
呻くようにして吐き出した楽巌寺のギョロリとした目には憎悪すら宿っている。
一方――伏黒は、東京校のメンバーの反応の薄さに動くことのできない虎杖を眺めていた。
すると、ヒックとしゃくり上げた詞織が、まるで体当たりするような勢いで、あろうことか虎杖に抱き着く。
「ユージの……ッ、バカッ! バカバカバカ! なんで……ッ! なんで生きてるなら、教えてくれないの⁉ バカァ‼」
ギュゥッと虎杖の胸元の服を固く握りしめる詞織に、当然、伏黒は心穏やかでなどいられるわけもない。
「詞織」
「ヤァ……ッ」
子どものように駄々をこねる詞織は可愛いが、それは自分の前だけにしてほしい。