第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「はい、お土産。京都の皆にはとある部族のお守りを。歌姫のはないよ」
「いらねぇよ‼︎」
続いて、五条は台車ごとグリンッと振り返った。
「そして、東京校の皆にはコチラ‼︎」
ジャンッと台車を片手に自分の後ろをくっついていた少年を、伏黒たちへ押し出す。
「高専の一年に編入することになった、吉野 順平君です! 皆、拍手拍手〜!」
パチパチッと一人で拍手をする五条に、「ハイテンションな大人って不気味ね」と釘崎が小さく呟いた。
全くもって同感なのだが、伏黒は内心で舌打ちをする。
編入生が来るのは構わないのだが、また男なのか。
女に入ってきてほしいと思っているわけではないのだが、詞織に変な気を起こす可能性のある男が入ってくるのもごめんだ。
「まだ呪術師としての知識も経験も少ないから、今回の交流会は見学ってことになってる。……ほら、順平。挨拶」
「は、はい……あの、よ、吉野 順平です……よろしくお願い、します……」
尻すぼみに、順平の声が小さくなる。
「(……吉野? 順平? うーん……ジュンペーの方が呼びやすいかも)」
「(コイツ、見るからに陰キャね。ガキの頃、絶対 アリ潰して遊んでたタイプだわ)」
詞織と釘崎がジッと見つめてくることに居心地の悪さを覚えたのか、順平が五条へ助けを求めるような視線を向けた。
「皆も自己紹介して下さーい」
五条に促される形で、二年メンバーも含めた東京校の簡単な自己紹介がされる。
「じゃあ、順平。分かんないことがあったら恵に聞いて。キミと同じ式神使いだから」
「は、はい……」
「勝手に決めるの止めてくれませんか?」
もちろん、そんな言い分が通るわけもなく。不意に詞織が、五条の持ってきた台車の箱を軽く叩いた。
「五条先生、これは?」
「あぁ、これかい? ふっふー!」
楽しそうに笑みを浮かべる五条は、きっとロクなことを考えていないはず。
全員が見守る中で、一人でに箱の蓋がバゴッと外れた。