第17章 開幕のファンファーレ【反省】
「なっ、なんで皆 手ぶらなのー⁉︎」
大荷物でやって来た釘崎に、伏黒は詞織や二年の先輩たちと首を傾げた。
「オマエこそ、何だその荷物は」
「何って……これから京都でしょ?」
パンダに問われた釘崎が呆然と答える。
その言葉に、伏黒は昨日、詞織が釘崎に言われたと言っていたことを思い出した。
どうやら、彼女は詞織に旅行へ行く準備をしろと言っていたのだ。
「京都 "で" 姉妹校交流会……」
「京都 "の" 姉妹校 "と" 交流会だ。東京で」
言い聞かせるパンダに、釘崎はようやく自分の勘違いを理解し、「うそでしょ~!」と頭を抱えた。
「どうりで、最近 会話が噛み合わないわけだ」
「野薔薇、京都に行けるって楽しみにしてたんだね」
「だな」
呆れたような視線を向ける真希に、詞織と伏黒も続く。
「去年 勝った方の学校でやんだよ」
「勝ってんじゃねぇよ! バカ‼︎」
悪態を吐く釘崎だが、二年生であるパンダたちは出場していない。
伏黒たちのように、一年生で交流会に出場するのは人数合わせが必要なときだけだ。
「去年はそれで憂太が参加したんだ」
乙骨 憂太――真希たちと同じ二年生で、現在 海外出張中の特級呪術師だ。
すでに解呪済みだが、当時はまだ特級過呪怨霊に取り憑かれていた。
呪いの女王とも呼ばれた『里香』という名の特級呪霊は、乙骨に危害を加える人間を徹底的に攻撃する。
そのうえ、底なしの呪力と術式を模倣する能力。
京都校で行われた去年の交流会は、乙骨の活躍で圧勝だったそうだ。
「許さんぞ、乙骨 憂太ァー‼︎」
真希の話に、釘崎は膝をついて、会ったこともない乙骨への恨みを叫ぶ。
そこへ不意に、真希が「おい」と全員へ呼びかけた。
「来たぜ」
伏黒たちが真希の視線を追うと、そこには京都校の生徒たちが勢揃いしていた。