第16章 これから目指すファンタジア【成長/我儘】
自分は他の特級呪術師と比べて強くない。
星也はそう自身を評価していた。しかし、一緒に行動し、戦ってみて分かった。
他の特級呪術師は五条しか知らないが、星也は特級を名乗るのに充分な実力を持っている。
きっと、彼の言う弱さとは、助けたい人間を全て助けられないことだろう。
それこそが、彼の優しさであり、強さであり、弱さなのだ。
「俺……星也さんみたいな呪術師になりたい」
「……それは、全てを『正しい死』に導くことよりもお勧めできないよ。それなら僕なんかより、五条先生が適任だ。性格は欠点だらけだけど、実力は目指すに値する。あれでも一応、僕の師だからね」
大きなため息を吐き、星也は出口の方へと足を向け――立ち止まった。
「頑張るのは構わないけど、死なない程度にしてくれ。真人に僕の攻撃は効かなかったけど、君はダメージを与えた。同じように、君にしか倒せない呪霊や助けられない人も大勢現れるだろう」
そこで一旦言葉を区切り、振り返った星也が夜色の瞳を真っ直ぐ虎杖に向けた。
「――……悠仁。君はもう、呪術師なんだ」
その言葉を聞いて、虎杖は目を大きく見開いた。脳裏で最初に会ったときのことを思い出す。
――『僕は、君が呪術師を続けていくことに疑問を持っている』
――『俺も名前でいいっスけど』
――『そのうちね』
これは、呪術師として認めてくれたということなのだろうか。
嬉しいと、素直に思った。けれど同時に、己の無力さがたまらなく悲しくて、同じくらい悔しかった。
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