第16章 これから目指すファンタジア【成長/我儘】
そこへ行くと、星良の言った通り、星也の姿があった。
地下ということもあるのか、薄暗い室内には真人に異形へ変えられた元人間たちが安置されている。
「姉さんに安静にしているように言われただろう、悠仁?」
「説教?」
互いに視線を合わせることなく、二人は台の上の彼らを見ていた。
彼らはすでに人間の姿を取り戻しており、星也が呪術を使用したのだと分かる。
「君は僕の命の恩人だ。説教なんてするわけないだろう?」
「……俺が?」
いったい何のことかと尋ねると、星也はようやくこちらを見た。
「真人の領域展開――君が来てくれなかったら、僕はここにいなかった」
「冗談。俺が来なくてもどうにかできただろ。それに……俺は何もしてない」
「奴の術式は他人の魂に干渉する。君が領域に侵入したことで宿儺の逆鱗に触れてしまったんだ」
星也の返答につい眉が寄る。
宿儺の逆鱗に触れたと言われても、自分は代わった記憶がない。
そう指摘すると、彼は静かに首を振った。
「宿儺が出たんじゃない。奴が入ったんだ」
「じゃあ、助けたんだとしても、それは俺じゃない。コイツの気まぐれだ」
やはり、自分は何もしていない。
ギュッと拳を握りしめ、虎杖は綺麗に並んだ遺体を見渡し、口を開いた。
「……星也さん。俺は今日、人を殺したよ」
人は死ぬ。それは仕方のないことだ。
だったらせめて、正しく死んでほしい。
ずっと――そう思っていた。
知っている人間ならなおさら。
知らない人間だって、その方がいいに決まっている。
だから……人を死なせないように頑張ってきた。
ポツリポツリと話すのを、星也は黙って聞いてくれた。その優しさに甘え、虎杖は続ける。