第16章 これから目指すファンタジア【成長/我儘】
「あ、虎杖くん。気がついた?」
覗き込んできたのは、快活な夜色の瞳。詞織や星也と似た面差しの女性だ。
虎杖はぼんやりとする頭を抱え、大きく息を吐き出した。
「星良、さん……? ここは……」
「呪術高専だよ。倒れた君を星也が運んできたんだ」
星良の後ろから、タバコを吹かしながら家入 硝子が出てくる。
「じゃ、後は任せたよ、星良」
「はい、硝子さん」
ピシッと笑顔で敬礼する星良を残し、硝子はひらひらと手を振って出ていった。
何となく自分の身体に触れる。服の上からだが、身体に刻まれていた傷は綺麗に治っているようだ。
その視線を見て、星良が眉を下げた。
「一応 反転術式を掛けたけど、まだ安静にしてて。体力だけじゃない。気力も呪力もかなり消耗しているわ」
「順平は……?」
「五条先生と話してる。たぶん、この後は学長の夜峨先生との面談じゃないかしら?」
そっか、と虎杖はホッと安堵の息を吐く。
「もう、あなたも星也と一緒ね。人の心配をするばっかりで、自分のことは二の次。もう少しは自分に優しくしてあげなさい」
星良が言い聞かせるようにして、頭をふわりと撫でてくれた。
真人との戦いで疲弊し、摩耗した心がいくらか和らいだ。
星也の名前が出て、ようやくこの場に彼がいないことに気づく。
「星也さんはどこに……?」
尋ねると、星良は微かに目を伏せた。
* * *