第15章 思惑の入り乱れるカンタータ【固陋蠢愚~殺してやる】
「絶対(ぜってぇ)ブッ殺してやる!」
「"祓う"の間違いだろ、呪術師」
星也は、特級呪術師として数々の死線を潜り抜けてきた。
そんな星也すら背筋を凍らせるほどの殺気が虎杖から放たれる。
底冷えするような研ぎ澄まされた殺気を受けたにも関わらず、真人は飄々とした態度を崩さない。
そして――……。
パリンッと窓を砕き、勢いよく放たれた真人の腕が、捕らえた虎杖ごとグラウンドへ放り投げた。腕は先ほどのように巨大に膨れ上がっている。
「虎杖くん!」
術を放とうとして、星也は止めた。
ちょうど虎杖が真人の陰に隠れていて、二人の距離感が把握できない。下手に術を行使すれば、虎杖まで巻き込む危険がある。
「くそ!」
割れた窓枠を掴んだ手に血が滲む。
星也の視線の先で、虎杖が地面に着地した。
そんな彼の身体能力に、星也はホッとするのと同時に呆れてしまう。二人がいたのは三階だ。なぜ呪術を使うことなく着地できるのか。
窓枠に足を掛け、虎杖を追うべく飛び降りた。当然、呪術を使用してだ。
虎杖と真人の戦いは続いている。
腕をドリルのようにして、真人は虎杖へ先端を飛ばした。ドリルにはヒモのようなものがついている。
虎杖はドリルを避け、ヒモのようなものを掴み、思い切り引っ張った。引きずり回してやろうと思ったのだろう。
しかし、真人はまるで狙っていたかのように、口角をニヤリと上げる。