第15章 思惑の入り乱れるカンタータ【固陋蠢愚~殺してやる】
「順平、呪術高専に来いよ。バカみてぇに強い先生とか、頼りになる仲間がいっぱいいるんだ」
彼らと協力すれば、順平の母親を呪った者もきっと見つかる。必ず報いを受けさせてやる。
「一緒に戦おう! な、順平!」
一人で思い詰めないでほしかった。一人で背負わないでほしかった。
独りではないのだと、分かってほしかった。
ギュッと握る手に力を込めると、順平が顔を伏せる。
その後ろから、階段を下りてくる青年に虎杖は気がついた。顔にたくさんのツギハギがある男だ。
「誰だ?」
そう言いつつ、虎杖は立ち上がって順平を背後に庇う。
この男は人なのか?
しかし、虎杖はその考えをすぐに否定した。
纏う空気が、人間とは全く違う。
「初めましてだね、【宿儺の器】」
ニヤリと不気味な笑みを浮かべた男がおもむろに袖をまくる。左腕が不自然に膨れ上がった。
「待って、真人さん!」
叫んだのは順平だ。どうやら顔見知りらしい。
だが、順平の呼びかけも空しく、真人と呼ばれた呪霊の膨れ上がった左手が素早く伸び、虎杖を窓枠に押さえつけた。
ようやく思い出す。ツギハギの顔を持つ人型呪霊。星也の言っていた通りだ。
このままでは危険すぎる。
真人からは敵意しか感じられない。
「逃げろ、順平! コイツとどんな関係かは知らん! けど、今は逃げてくれ!」
頼む、と虎杖は続ける。
真人と呼ばれた呪霊は順平と顔見知りらしいが、彼に対する好意すら感じられなかった。
今すぐにでも、二人まとめて殺してしまいそうなほどに。
呪霊の登場に取り乱していると感じたのか。
順平が「落ち着いて!」と声を張り上げる。