第15章 思惑の入り乱れるカンタータ【固陋蠢愚~殺してやる】
学校の体育館で行われていた全校集会の真っ最中に、生徒が次々と気を失って倒れた。
その光景に絶句しつつも、外村は教師として、肥満気味の巨体を無理やり動かし、生徒へ駆け寄る。
「おい! どうした、オマエら! しっかりしろ! 大丈夫か⁉」
「死にはしないよ」
突如落ちた影に見上げると、自分が受け持つクラスの生徒である吉野 順平がこちらを見下ろしていた。
昨日、家まで話をしに行ったばかりだ。そのときとはまるで雰囲気が違い、もしかしたら別人なのではないかと錯覚するほどに、冷ややかな瞳がこちらを見下ろす。
「吉野……なんで……いや……知っているのか? 何が起こっているのか……」
不登校の生徒が学校へ来てくれた。それは喜ばしいことなのに、この異常な状況と順平の落ち着き払った態度に、どうしても喜んではいられない。
順平は外村の前に立ち、見せつけるようにして長い前髪をかき上げた。そこには、痛々しいタバコによる火傷の痕が刻まれている。虐待やイジメを連想させる傷痕に、外村は思わず息を呑んだ。
「オマエ、その傷! それ……!」
「先生、ちゃんと見ててね。これまでのことも、これからのことも」
ゆっくりと足を動かし、順平は外村と違う方へ視線を移す。そこに立っていたのは、全国読書感想文コンクールで最優秀賞を獲得し、先ほど全校集会で表彰された男子生徒。
教師や生徒たちにも信頼される好青年で、財力や権力を持つ家の子どもである。