• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第15章 思惑の入り乱れるカンタータ【固陋蠢愚~殺してやる】


 学校の体育館で行われていた全校集会の真っ最中に、生徒が次々と気を失って倒れた。

 その光景に絶句しつつも、外村は教師として、肥満気味の巨体を無理やり動かし、生徒へ駆け寄る。

「おい! どうした、オマエら! しっかりしろ! 大丈夫か⁉」

「死にはしないよ」

 突如落ちた影に見上げると、自分が受け持つクラスの生徒である吉野 順平がこちらを見下ろしていた。
 昨日、家まで話をしに行ったばかりだ。そのときとはまるで雰囲気が違い、もしかしたら別人なのではないかと錯覚するほどに、冷ややかな瞳がこちらを見下ろす。

「吉野……なんで……いや……知っているのか? 何が起こっているのか……」

 不登校の生徒が学校へ来てくれた。それは喜ばしいことなのに、この異常な状況と順平の落ち着き払った態度に、どうしても喜んではいられない。

 順平は外村の前に立ち、見せつけるようにして長い前髪をかき上げた。そこには、痛々しいタバコによる火傷の痕が刻まれている。虐待やイジメを連想させる傷痕に、外村は思わず息を呑んだ。

「オマエ、その傷! それ……!」

「先生、ちゃんと見ててね。これまでのことも、これからのことも」

 ゆっくりと足を動かし、順平は外村と違う方へ視線を移す。そこに立っていたのは、全国読書感想文コンクールで最優秀賞を獲得し、先ほど全校集会で表彰された男子生徒。
 教師や生徒たちにも信頼される好青年で、財力や権力を持つ家の子どもである。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp