第3章 はじまりのプレリュード【両面宿儺】
どれほど歌い続け、どれほどの呪霊を祓っただろうか。
まさか、これほど多いとは思っていなかった。
少し祓って、学校に潜む呪霊を減らそうと思っていたのに……減るどころか、どんどん数を増やしていく。
――何かがおかしい。
そう感じていた頃、ポケットでスマートフォンが「ピピピッ」と音を鳴らした。着信の相手は伏黒 恵だ。
「……メグ……?」
『大丈夫か、詞織!』
「……はぁ……だい、じょうぶ……」
物陰に隠れ、ゆっくりと呼吸を整える。呪力は問題ないが、体力を消耗しすぎて疲労がなかなか回復しない。
「……呪物は? 回収できた?」
『いや、まだだ。虎杖 悠仁が持っていたのは、呪物の入れ物。俺たちが感じたのは、特級呪物の箱にこびりついていた残穢(ざんえ)だ』
「残穢……」
『今は虎杖の先輩が持っているらしいが……今夜、部室で封印を解く気らしい』
封印を解く? いや、もしかしたら……。
「……もう、解いてるかも……」
それならば、全て納得がいく。
イヤな予感が消えないのも。
呪霊の数が減るどころか増え続けているのも。
特級呪物を狙って、呪霊たちが集まっているのだ。
本来なら、呪力を持たない人間に封印の札を剥がすことなどできない。
しかし、あの特級呪物は強すぎるうえ、封印自体が年代物。もはや封印などほとんど名ばかりで、札も紙切れ同然だ。
詞織の説明に、電話の向こうで伏黒が舌打ちする。