第14章 トランクィッロに募る【幼魚と逆罰】
神ノ原一門の相伝【陰陽術式】には、反転した呪力を必要とする術も多い。それは【陰陽術式】から派生した術式も同じこと。
そのため、【反転術式】はともかく、【術式反転】を習得するために呪力操作は必須。
しかも、こうした事情からか、神ノ原の術師の呪力には癖があり、反転した呪力を生みやすいようになっている。
もちろん、何もせずに習得できるわけではなく、並ではない努力が必要。家には習得のための書物もあり、星也も星良も、早いうちから修練を積んでいた。
それでも星也が星良に治療を頼んだのは、ただ会いたかったからだ。
己の弱さを吐き出したかったから。
そんな自分の弱さを、星良も分かってくれている。
――本当に、頭が上がらない。
「ありがとう、姉さん。もう行くよ」
「待って、星也」
弟を引き止め、星良は懐から取り出した物を星也の手に握らせた。
「持って行って。何かの役に立つかもしれないから。それと……」
ロケットペンダントを星也の首に掛ける。
「お守り。さっき任務があった街で見つけたの。一つしかないから、星也に。詞織には恵がついてるけど、星也には誰もついててあげられないでしょ。中は開けちゃダメよ」
悪戯っぽく笑う星良に、星也もようやく笑みを浮かべることができた。
* * *