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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第14章 トランクィッロに募る【幼魚と逆罰】



 ――『いっばい練習したからさ』

 ――『実験体としてベスト』

 ――『俺は運がいいね』


 発生してから時間が浅いのか、幼い子どものような呪霊だった。自分のやっている残虐性を理解できていないかのような。
 いや、知ったところで止めることもしないだろうが。

 五条が遭遇したという特級呪霊は【領域展開】まで習得していたと聞く。

 あの呪霊が生きていたとしたら、その段階まで上り詰めるのに時間は掛からないだろう。いや、もしかしたら、すでに習得済みかもしれない。

 一つ一つ星良に話しながら、星也の頭は驚くほど澄み渡っていった。

「一秒でも早く祓わないと、どんどん被害者が増えていくわね。手伝ってあげたいけど……あたしもまだ任務を抱えてて……」

「大丈夫。もう……大丈夫だよ」

 抱きしめていた姉を解放し、星也は「大丈夫」を繰り返した。

「ほんとーに?」

「本当に」

 窺うように星良が目を細める。心配してくれているのだと分かり、胸がじわりと熱を持った。

 いつだって、自分の心の弱さを理解し、励ましてくれる姉。行き先を見失ったときに導いてくれる、星也にとっての北極星だ。

 だったら良いけど、と星良は小さな巻物を取り出し、筆で文字を書き綴った。


「【反転術式――修復】」


 淡い光が身体を包み込み、星也の身体に刻まれた傷を消していく。痛みも引き、心なしか疲労感も薄れた気がする。

 負(マイナス)の呪力同士を掛け合わせて正(プラス)の呪力を生み出し、ダメージ回復や治癒を可能とする【反転術式】、同じく正の呪力で術式を反転させる【術式反転】。

 特に【反転術式】は習得も扱いも難しい術で、他人に使うとなると難易度はさらに上がる。

 だが、神ノ原の人間にとっては他の人たちほど難しくなく、星也も習得していた。
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