第14章 トランクィッロに募る【幼魚と逆罰】
「はい、ごめんなさい」
『なぜ謝るんですか?』
電話の向こう側で首を傾げる星也に、伊地知は「いえ」と曖昧に誤魔化す。
『近くに姉さんがいるみたいなので、治療を受けてきます。位置情報を送ったので、ピックアップをお願いできますか?』
「治療って……!」
まさか、呪霊と戦って傷を負ったのか。特級呪術師である彼が?
それほどまでに、相手は強敵だというのか。
息を呑む伊地知に、星也は『大丈夫です』と気遣う。どうやら、重傷というわけではないらしい。
よかった、とホッと安堵の息を吐く。
「分かりました。では、すぐに虎杖君と合流し、そちらに向かいます」
そこまで言って、伊地知は自身の失言に気づいた。しかし、それももう遅い。
『……一緒にいないんですか?』
私のバカ!
電話の向こうにいる星也の低い声に、空気だけでなく、伊地知の心も震えた。
* * *