第14章 トランクィッロに募る【幼魚と逆罰】
「ミミズ人間3」
「あれ、超つまんねぇよな!」
思いがけず知っている映画だった。
五条による、B級スプラッタ映画を見つつ、学長の作った呪骸(じゅがい)のぬいぐるみに安定して呪力を流すという呪力操作の特訓をしていたときに観たのだ。
呪力を上手く流せないと、ボコボコに殴ってくるのだ。つまらなすぎて、何度殴られたことか。
まさか知っていると思わなかったのか。
順平は少し目を丸くしながら「本当にね」と同調する。
「でも、スプラッタ映画だからさ、その描写以上の内容を求める僕たちが悪いのかもね……でも2は……」
「でも、2はちょっと面白かったな!」
何を言いかけたか分からないまま、つい遮ってしまった。
ごめん、と口を開こうとすると、順平が食い気味に「そう!」と声を上げる。
「そうなんだよ‼︎ 2だけは楽しみ方があるんだよ! 2も一見、1とか3と変わらないんだけど、完璧主義の人間が全てを投げ出すまでの感情が、ちゃんと描けてるんだ」
「あー、だから2は観られたのか」
言われてみて納得する。確かに、1や3と違って、登場人物に感情移入できていた。そう考えると、心理描写が他の二作品と違って上手くできていたということか。
「僕も最初、なんで面白いのか分かんなくてさ。わざわざ三回観たよ。グロ描写も2が一番キレてたから、辛かった……」
「何でそこまですんの?」
ミミズ人間シリーズでひとしきり盛り上がり、やがて一息吐いた頃には、順平から緊張した雰囲気はなくなり、リラックスした状態で話してくれるようになっていた。