第13章 残酷なカプリッチョ【幼魚と逆罰】
「【青龍、迎撃】!」
青緑の鱗をもった龍が、鋭い牙を光らせて異形を噛み砕いた。
『なんだ⁉︎』
目を丸くして驚愕する青年に構わず、星也は続ける。
「【白虎、強襲】!」
鋭い風の刃が飛び交い、襲いくる異形ごと、青年を切り刻んだ。
大気が龍の形を、風が大虎の形を取り、それぞれ星也の傍に降り立った。
『式神……?』
答えてやる義理はない。青年も深く追及することなく、懐からさらに二体の人形を取り出した。鋭く打ち出された異形は、まるで剣のように伸びてくる。
「一旦、下がれ!」
青龍と白虎が姿を消す。同時に、星也が打ち出された異形を避けると、それは壁を砕いて突き刺さる。
『んー!』
興奮して声を上げる青年に眉を寄せ、星也は突き刺さった異形の上に飛び乗った。
どうやら、形を変えるのに元の人間の質量は関係ないらしい。
触れた魂の形を変えることで自在に肉体の形を変える。異形に変えるだけでなく、大きくしたり、小さくしたり、伸縮も自在なようだ。
触れた異形の身体に、人の顔が浮かび上がる。
『……けて……タす……けでぇ……』
――「一度改造された人間は、まず助からん。襲われたら、迷わず殺せ。それが、被害者のためでもある」
脳裏に過ったのは、異形の解剖を担当した家入 硝子の言葉だ。
『あー、ゴメン ゴメン。いっぱい練習したからさ、大きさ変えてもすぐ死ぬことはないけど、脳? 意識? の方はまだ精度が悪くてさ。そうやって魂の汗が滲み出ることがあるんだ。気にせず続けよう』
「気にしてなんかいないよ」
事実、すでにこの人間は助からない。異形となった瞬間に命が終わっている。