第13章 残酷なカプリッチョ【幼魚と逆罰】
「アンタがさっき元人間を人間に戻した術。あれ、反転術式でしょ? 呪霊と違って、人間が反転術式を使うのは難しいって聞いてるけど……俺のは違うよ。治癒じゃない。己の魂の形を強く保っているんだ。もう分かったでしょ。俺の術式は魂に触れ、その形を変えられる」
青年が懐から何か小さなものを取り出す。
「――【無為転変(むいてんぺん)】」
パキパキと音を立てて呪霊が現れた。
いや、違う。異形に変えられた人間だ。
「人間(コマ)を小さくしてストックしてるんだ。結構難しいんだよ。一般人は形変えちゃうとそのうち死んじゃうけど、呪術師はどうかな?」
言いながら、懐からさらに二つの小さな人形をチラつかせる。
触れたものの魂の形を変えられる――つまり、触れられたらそこで終わりだ。
できるだけ距離をとって戦わなければ。
詠唱していては距離を詰められる。
星也は懐から呪具を取り出した。
伸縮式の棒の形をした呪具【天枢(てんすう)】。
伸ばすことで刺突に特化した棒、短い状態で刃のように呪力を伸ばして剣としても使える、星也愛用の呪具だ。
「お、武器を取り出したってことは、結構本気?」
「手加減しないって意味なら、君の言う通り本気だよ」
ニィッと凶悪な笑みを浮かべた青年は、先ほど取り出した異形に星也を襲わせる。その異形に向けて、星也は天枢を打ち出した。
貫かれた異形が死ぬ。人間に戻してやる時間はない。背後には、さらなる異形が迫っている。