第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「待て。今、俺が話してるだろ! 失礼だな!」
「あー、いや。俺もかなり大事な用でして」
「大事な用⁉︎ 子どもが何言ってんだ‼︎」
カチンッときた。なぜ、子どもの話より大人の話の方が大事だと決めつけるのか。こちらの事情を聞いたわけでもないのに。
『子どもだから』と決めつけて軽んじられるのは、子どもに対して失礼ではないのか。
子どもだって、大人と同じくらい考えたり、苦しんだりする。
子どもだから間違っていて、大人だから正しいわけではないはずだ。
大人だから分かって、子どもだから分からないこともない。
それが分からない大人にはなりたくないなぁ……この、目の前の『大人』のようには。
「大体、どこの制ふ――……」
あんまり腹が立ったので、虎杖は最後まで聞かず、勢いよく男のズボンを引きずり下ろした。
きっと、『子どもだから』許してくれるだろう。
まぁ、そんなはずもなく。
「くっ……何すんだ、このガキ! やめっ! やめなさーい!」
虎杖は男に掴みかかり、男のズボンを完全に取り上げ、ダッシュした。
「持ってかないでー!」
後ろから鈍足で追いかけてくるのを感じながら、虎杖は早々に近所を一周して元の場所へと戻る。
「そんじゃ、行こうぜー」
「え、はや‼︎ もう一周してきたの⁉︎」
そんなに驚かなくても、近所を一周してきただけだ。この程度ならば十秒もかからない。
男のズボンは、近所の木の少し高いところに引っ掛けてきたから、しばらくは戻らないだろう。
そう話すと、順平は呆れたように眉を下げた。