第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
④二級呪術師以上のポテンシャルが吉野 順平にあった場合、一度退いて、星也と合流。
二級ぐらいならギリギリいける、と言いかけて、虎杖は思い出す。
刑務所での一件に臨む前、伊地知や伏黒たちから講義を受けていた。
二級呪霊なら、今の虎杖は祓えるだろう。
だが、二級呪術師は二級呪霊を祓えて当たり前。なぜなら、二級呪術師は一級呪霊に近い実力を持つからだ。
「ここからは降りますよ」
伊地知に促され、虎杖は自動車を降りる。
なんだか、自作自演のようで気は進まないが、仕方がない。これも必要なことだ。
住宅街に入っていく順平を、虎杖は伊地知と追いかけた。
電柱に書かれている住所を確認する。
「どうやら、自宅に帰っているようですね」
こそこそと人目を憚るようにして、二人は小声で合図を交わした。
この辺りなら、被害もないだろう。
「いきますよ、虎杖君」
ケージを地面に下ろした伊地知が、扉を開ける。
そのとき、ふと順平の様子を窺うと、家の前で肥満体型の男と話しているのが見えた。
「タンマ! 誰かいる‼︎」
「え?」
だが、もう遅い。
虎杖は反射的に、飛び出した蠅頭を捕まえるべく駆け出した。
どうにか蠅頭の一匹を捕まえると同時に、順平と目が合う。
あ、コイツ、見えてるな。
そう、虎杖は直感した。
虎杖は軽快に身を翻して着地するものの、ゴンッと電柱に頭をぶつけてしまう。目を丸くする順平と太った男に構わず、虎杖は声をかけた。
「なぁ。ちょっと聞きたいことがあっからさ、面(ツラ)貸して」
いきなり馴れ馴れしいかとも思ったが、虎杖は構わず順平の腕をとる。
なんとなく、顔色が悪い。憶測でしかないが、順平は早くこの男との話を切り上げたいのだろう。