第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「……わざわざそこまでしなくても、僕だけ引っ張って行けば良かったんじゃ……」
「んー、まぁ……でもさ、オマエ、アイツ嫌いだろ」
「なんでそう思うの……?」
目を丸くする順平に、虎杖は「なんとなく」と返す。
男と話している間、順平はずっと暗い表情をしていた。
怒るとか悲しむとか、そういった感情を超越したような、思い詰めた表情だったように思う。
どっちが正しいとか、間違っているとか。虎杖の中ではどうでもよくて。
ただ、そんな顔をさせる状況から助けてやりたいと思ったのだ。
「あっ、違った?」
「違くないけど」
「だろ。嫌いな奴にいつまでも家の前にいてほしくねぇじゃん」
「……うん」
戸惑いつつも順平は頷く。
「俺、虎杖 悠仁」
「吉野 順平」
順平の名前は知っていたが、そこは黙っておかなければならないことは分かっている。
虎杖は「そっか」と返して、辺りを見渡した。
「あれ、伊地知さん?」
伊地知の姿がない。
自分はこの後、どうすればいいのか。
順平を見れば、どこかビクビクした様子でこちらを見てくる。
全く分からないまま、虎杖はひとまず、事件のことよりも先に、どこか話せる場所がないか聞いてみることにした。