第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「いました」
「アレ? 私服?」
虎杖が停車した自動車の中で伊地知と見張っていると、横断歩道を渡る吉野 順平を見つけた。
昼間にも関わらず、制服ではなく私服を着ている。どうやら、学校に行くつもりはないようだ。
「警察の調査によると、高校にはしばらく行っていないみたいです」
学校に行っていない……まぁ、何か行きたくない理由があるのだろう。そこは別に気にするところではない。
「……で、どうすんの?」
虎杖の問いかけに、伊地知が「これを使います」と小さなケージを取り出した。中には羽の生えた二匹の異形が囚われている。
これはどう見ても――……。
「それ、呪霊?」
「【蠅頭(ようとう)】。四級にも満たない低級の呪霊です」
檻の柱を握り、目をギョロリとさせ、蠅頭が「イー」と鳴いた。
「人気(ひとけ)のないところに出たら、コイツに彼を襲わせます」
「うぇ⁉︎」
伊地知の作戦は、この蠅頭に順平を襲わせ、その反応を窺い、呪詛師かどうかを判断するというものだった。
①呪霊を視認できない一般人の場合、虎杖が救助する。
②視認できるが対処する術を持たない場合、同様に虎杖が救助、事件当日の聴取を行う。
③呪術で蠅頭を祓った場合、即時拘束する。
「③って、力づく?」
「力づくです。誤認ならそれでいい。後で謝りましょう」
そんな適当でいいのか?
力づくということは、明らかに殴るか蹴るかしているはずなのだが。
謝ってすむのだろうか?
「ただ……」
神妙な顔で伊地知が続ける。