• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】


「それに、彼に何かあっては、詞織と恵が悲しむからね」

 ポツリと呟くと、遠くから「星也さーん!」という呼び声と共に、虎杖が戻ってきた。
 勢いよく部屋に飛び込んできたかと思えば、屈託のない笑顔で口を開く。

「言い忘れてた。星也さん、気をつけてね」

 虎杖の言葉に、星也は目を丸くした。

 苦労知らずというわけではない。
 祖父が死に、呪いを食らって、己の無力を痛いほど痛感して、一度 死んだ。

 星也にとって、虎杖はまだ経験不足。そのことに間違いはない。
 しかし、それはあくまで『呪術師として』だ。修羅場や死線を越えたようだが、それはまだ一度や二度程度。

 だが、人生経験としては、虎杖はすでに、心が折れても仕方がないくらいの出来事を体験している。
 それなのに、なぜこうも、屈託なく笑えるのだろうか。

「どしたの?」

 何も返さない星也に、虎杖は首を傾げる。

「何でもない。虎杖くんも、気をつけるんだよ」

「オッス!」

 眩しいくらいの笑みに、それでも星也は笑顔を返すことはできなかった。

* * *

/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp