第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「それに、彼に何かあっては、詞織と恵が悲しむからね」
ポツリと呟くと、遠くから「星也さーん!」という呼び声と共に、虎杖が戻ってきた。
勢いよく部屋に飛び込んできたかと思えば、屈託のない笑顔で口を開く。
「言い忘れてた。星也さん、気をつけてね」
虎杖の言葉に、星也は目を丸くした。
苦労知らずというわけではない。
祖父が死に、呪いを食らって、己の無力を痛いほど痛感して、一度 死んだ。
星也にとって、虎杖はまだ経験不足。そのことに間違いはない。
しかし、それはあくまで『呪術師として』だ。修羅場や死線を越えたようだが、それはまだ一度や二度程度。
だが、人生経験としては、虎杖はすでに、心が折れても仕方がないくらいの出来事を体験している。
それなのに、なぜこうも、屈託なく笑えるのだろうか。
「どしたの?」
何も返さない星也に、虎杖は首を傾げる。
「何でもない。虎杖くんも、気をつけるんだよ」
「オッス!」
眩しいくらいの笑みに、それでも星也は笑顔を返すことはできなかった。
* * *