第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「虎杖くん」
「あ、ウス」
ずっと沈黙を守っていた虎杖が星也へ向き直り、返事をした。
「実際に彼らを解剖した家入先生の話だと、二人の死因は身体を改造されたことによるショック死だ。君が殺したんじゃない。分かったね?」
この言葉がどれだけの慰めになったのかは分からないが、虎杖は眉を下げて「はい」と力なく頷く。
自分の落ち度で、彼に要らぬ負担を背負わせてしまった。
ギリ…と奥歯を噛み締めていると、家入が星也の肩を叩く。
「お前もだ、バカ。人に言っておいて、自分は納得できないとか言うつもりはないよな」
家入に呆れたような目を向けられ、星也は無理やり少しだけ肩の力を抜いた。
「……俺が殺したとしても、殺してないとしても……俺にとってはどっちも同じ重さの他人の死だ。それでも、これは……趣味が悪すぎだろ」
虎杖が一つ言葉を紡ぐたびに、ピリピリと空気が震える。
話には聞いていた。
両面宿儺の指を呑み込んだのも、誰かを助けるため。
伏黒にも聞いた。詞織を助けるために来た道を引き返し、宿儺と代わるリスクを背負ったのだと。
誰かのために身体を張り、名前も知らない他人のために本気で怒ることができる。
それが、虎杖 悠仁という人間の性質なのだろう。
「虎杖くん。あの残穢自体ブラフで、僕たちは誘い込まれた可能性が高い。相手は相当なやり手だ。力を抜けば向こうのペースに巻き込まれてしまう」
星也は家入に礼を言い、解剖室を出た。その後ろからは虎杖がついて来ている。
「君の言う通り、気張って行くことにしよう」
「応‼」
力強く頷く虎杖と共に、星也は先を見据えた。
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