第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「【天与呪縛(てんよじゅばく)】――先天的に肉体に刻まれた縛りのことだけど。二人はまさにそれだ。陰陽術式の全てが使えない代わりに、姉さんは書字具現術を、詞織は歌楽具現術を、それぞれ高出力で扱えるんだ」
なるほど。あれ? それでは――。
「星也さんは? 全部使えるんだよね?」
「僕は……そうだね。確かに全部使えるよ」
「星良さんが、自分たち以上に使えるって言ってたよ」
「それは姉さんの過大評価だ。書字具現術も歌楽具現術も、姉さんや詞織の方が使えてる」
ふむ。この話はこのままでは終わらなそうだな。
そう思ったのは星也も同じようで、コホンッと軽く咳払いをして手を複雑に組み合わせた。
「――【ノウマク・サンマンダバザラダン・カン】」
淡々とした声音が呪文を紡ぐ。意味は分からないが、おそらく真言と呼ばれるものだという知識は持っていた。
詠唱に伴って、星也が相手をしていた呪霊を炎が包み、炙る。
「すんげー!」
「よそ見をしている暇はないよ」
視線を呪霊に戻すと、口を縦に開いて呪霊が飛びかかってきた。
虎杖はそれを軽く躱し、拳を握って腰を落とす。拳に意識を集中させ、呪力を乗せて呪霊に放った。
五条との訓練で偶発的に生まれた技。虎杖の呪力は遅れてやってくる。
虎杖の瞬発力に呪力が追いつかず、呪力を留める技術も未熟だからなのだと、五条は説明してくれた。
だが、それが逆に変則的な呪力の流れを作っているらしい。
拳が当たったと認識した直後に呪力がぶつかり、一度の打撃で二度の衝撃が生まれる。
――【逕庭拳(けいていけん)】。
五条が虎杖の技につけた名だ。
虎杖の技を真正面から喰らった呪霊が悲鳴を上げて倒れる。
どれくらいの階級かは分からないが、やはりこの程度なら余裕だな、とトドメを刺すべく拳を振り上げた。