第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「虎杖くん。とりあえず、僕の術式を教えよう」
「え⁉︎ 教えちゃって大丈夫なの?」
なんとなく、そういうものってダメな気がする……というか、呪霊に集中したいのだが。
呪霊から視線を逸らすことなく、意識の半分くらいを星也に向ける。
「別に、気にしなくていい。僕の術式は教えたからどうにかなることもないし。それにメリットもある」
手の内をさらすという縛りが、術式の効果を底上げするのだという。あえて不利な状況を作り出すことが、術式にとって有利に働くらしい。
「縛り……確か、詩音にもって……」
「あぁ。詩音の力は強いからね。『詞織の許可なく強い力を振るえない』という縛り。『詞織が愛する限り裏切ることができない』という縛り。他にも色々あるけど……そうすることで、手綱を詞織に握らせているんだ」
なるほど。しかし、宿儺相手に自分が真似することはできなそうだ。
「おしゃべりはこのくらいにしようか」
そう言って、星也は目の前の呪霊を見据える。
「僕の使う陰陽術式は本当なら、姉さんや詞織にも使えるんだ」
「星良さんと詞織も? でも、二人は使えないって……」
確か、星良が言っていた。
陰陽術式が持つ様々な術式の中で、星良は文字、詞織は言葉に特化しているのだと。