• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】


 やがて、残穢を追って屋上の扉を開ける。そこには呪霊がいた。
 四足歩行の瘦せぎすな呪霊だ。黒い髪を生やし、同じ色のふさふさとした犬のような尾を持っている。目がギョロリと飛び出ていて歯も剥き出しだ。

『おべおべん、とぅ~』

 ぎょろりと蠢いた目玉に、虎杖は体勢を低くした。それを星也が制する。

「待って。コレは僕が相手をする。虎杖くんはソレを」

 星也が促す視線の先には、もう一体の呪霊がいた。
 身体は蜥蜴のような爬虫類に似て、歯は縦向きに、横へ開く。目は小さく、開いているのかどうかさえ不確かだ。

『いいい~ぃ、せん、ざい……』

 気味の悪さに内心で引いてしまう。

「勝てないと思ったらすぐに呼ぶんだ」

「ちょっとナメすぎじゃない? 俺のこと」

 階級とかは詳しくないが、この程度を祓うくらいはできる。
 むしろ、遅れをとるかもしれないと思われていることの方が腹立つのだが。

「ナメているわけじゃないよ。ただ、僕は五条先生から君を任されている。それに、君は詞織や恵の友人で――なにより、僕より弱い。充分、庇護対象だ」

「そういう基準なら、ナメられた方がよかったよ」

 カチンッときて憎まれ口を返す虎杖に、星也は呪霊を見据えたまま続ける。

「君はいくつかの死線を越えてきたけど、まだまだ未熟だ。心も、身体もね。きっと、これからもっと知ることになるよ。失ったもの、守れなかったもの……それを数えて、押し潰されて、己の無力を噛み締めたとき――……君の心は、いったいどこを向いているだろうね」

 その言葉に、虎杖は目を丸くした。言っている意味が分からなかった。けれど、考える間もなく、星也が呼んでくる。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp