第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「見えるかい? これが呪力の残穢(ざんえ)だ」
映画館のシアター入口を示す星也に、虎杖は目を大きく開く。
「いや、全然見えない」
「見ようとしなければ見えないよ。僕たちは普段、当たり前に呪霊を視認し、術式を使えば痕跡が残る。それが残穢だ。けど、残穢は呪霊と比べると薄い。目を凝らしてよく見てごらん」
星也の説明を聞き、虎杖は見開いていた目を細め、遠くの細かい字を見るように凝らした。すると、ぼんやりとシミのようなものが見えてくる。
「おぉっ! 見える見える」
「当然。見る前に気配で悟って一人前だ」
むむ……と、虎杖は思わず苦々しい表情になる。
「もっとこう、褒めて伸ばすとかさぁ……」
「褒めるのは得意じゃない。貶すのも苦手だけど。ただ、事実は言うよ。それより、この残穢を追おう」
「押忍! 気張ってこーぜ‼」
「いや。必要以上の力を使うのは効率が悪いから、ほどよく行こう」
「お、押忍……」
どうにも噛み合わないのはなぜだろうか。
星也の後を追いつつ、虎杖はどうにか彼と距離を縮められないか考えた。
「星也さんって伏黒のことは名前呼びっスよね?」
「つき合いが長いからね」
「俺も名前でいいっスけど」
「そのうちね」
やはり、壁を作られる。
普段なら気にならないのだが、段々とヤケになってきていた。
詞織の兄であるということも一因だろう。
星良の方は、まだ何度も話したわけではないが、結構砕けた感じで話せるのに。
「監視カメラには何も映ってなかったんだよね?」
映画館の階段を上りながら、仕事の話に戻す。
「あぁ。被害者以外は、男の子が一人……君と同じくらいの、たぶん高校生だろう」
だったら、犯人は呪霊だろうか。
その男子校生らしき少年の仕業という可能性もあるだろうが。
その身元特定は警察の仕事だ。