第12章 再会までのインテルメッツォ【幼魚と逆罰】
「そう。上層部のやり口は好きではないけど、両面宿儺に関して言えば、僕も規定側だ。詩音と違って、君は宿儺を押さえ込むことができていない」
詩音には縛りがあり、詞織の許可なく強い力を振るうことができない。
つまり、詞織は詩音の手綱をしっかりと握ることができている。
けれど、虎杖の中の宿儺はそうではない。だから、虎杖は宿儺に殺されかけた――いや、宿儺のきまぐれがなければ、事実 虎杖は死んでいた。
「僕は、君が呪術師を続けていくことに疑問を持っている。それでも――宿儺という爆弾を抱えていても、君自身が有用であると示すために、尽力することだ」
星也の言葉に、虎杖はギュッと拳を握りしめ、強い意志をもって星也を見据えた。
「……俺が弱くて使えないことなんて、ここ最近、嫌ってほど思い知らされてる。でも、俺は強くなるよ。強くなきゃ、死に方さえ選べねぇからな。言われなくても認めさせてやっからさ、もうちょい待っててよ」
少年刑務所で特級呪霊と戦って分かった。
自分の圧倒的な弱さを、思い知った。
だから、あのときの恐怖や悔しさ、無力感を覆すだけの力を身につけ、大事なものを守れる強さを学ぶのだ。
「……僕に言っても仕方ないだろう。規定側は上にいくらでもいるんだから」
「あ、ハイ」
おかしい。伏黒や詞織と話しているときはそんなに思わなかったが、妙に絡みづらい。
いや、よく考えれば、星也と一対一で会話するのは、今回がほぼ初めてか。
先行きに不安を覚えながら、虎杖は五条に別れを告げ、任務地へ向かった。
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